2024年1月18日木曜日

バッティングセンターとホットヨガ

 右肩に謎の痛みがあって大変鬱陶しい。最初は肩甲骨の辺りだったが、今は肩と腕の付け根が芯から痛い。

これと似たような痛みを以前体験したことがある。

今日はそんな話をば。

その痛みを感じたのは、2006年3月19日のことである。

なぜこんなにはっきりと日付を特定出来るのかと言うと、この日は第一回WBCの準決勝の日で、福留孝介選手があの伝説の代打2ランを放った日だからである。

そしてこの日はまた、松竹芸能の漫才師 暁明夫の結婚パーティーの日でもあった。

WBCを見終わった僕はその足でパーティーに向かい、会場にいた仲間と日本の快勝と福留のホームランの凄さを語りあったのである。

そうして結婚以外の話題で異常に盛り上がった数名は自らも福留孝介となるべく、あろうことか二次会を辞退して近所のバッティングセンターへと向かったのである。

大阪では有名な「梅田バッティングドーム」
今でもあります

普段、野球などまったくしない僕は周りが制止するのも構わず、そのバッティングセンターで最速を誇る140km/hのケージへと踏み込んでいった。一球、二球と様子を見るが、球が速すぎてまったく打てる気配がない。しかも、バッターボックスに立ってるだけで怖い。めちゃくちゃ怖い。

そこでこの140km/hは無かったものとして途中で放棄し、これが初めてのバッティングセンターですという顔で120km/hのボックスへと移動。120km/hの球は、なんとか頑張ったら打てそうな気配が漂っていたので、「いよいよ ここで心の『福留』を開放する時が来たな」と、全力のフルスイングで球を迎え撃つ事にした。

テツローの左腕を破壊した事で有名なバッティングケージ(嘘)
この時のピッチャーは絵だったが、今は実写映像だそうです

しかし、何度も言うが、普段まったく野球などしない僕はバッティングの事などなにも解っておらず、ただただ力任せにバットを振り回したら、途中でグリップから右手が外れてしまった。おかげで全力フルスイングのパワーは、フォロースルーという形で左手一本だけに委ねられ、結果として左肩を亜脱臼するという憂き目にあってしまったのだ。

その時の様子を正確に描写したもの
この後しばらく腕を押さえたままのたうち回る事に

この亜脱臼というヤツは、「亜」と付く割には真剣に日常生活に支障をきたすぐらいには腕が不自由になり、そしてとても痛いのである。

それなのに当時の僕は「利き腕じゃないし、いつか治るやろ」と呑気に構え、日々痛い痛いと言いながら病院にも行かず、そのまま9月になるとキャンプをしに友人の待つカナダまでほいほいと行ってしまったのである。

カナダの友人は僕が極端に右手一本で事を済ますのを見て異変を感じ取り、その原因が亜脱臼だと知ると「それにはホットヨガが良いよ」と勧めてくれた。友人の通っているヨガ教室には生徒以外を一人まで連れてきても良いという体験入門制度があるらしく、それを利用して僕もホットヨガを体験できるよ、と。

面白がりの僕は亜脱臼が治る治らないは別として、ホットヨガを体験するべく即座にその話に乗った。

ホットヨガの「Bikram's yoga college of India」
のちに一大スキャンダルが報じられ、今はもう存在しない

当時はホットヨガがどのようなものなのか全然知らず、ヨガ自体も初めてだったのでウキウキでスタジオに入ったのだが、入った瞬間にもう絶望的に後悔した。自分にはまったく合わない環境だったからだ。

室温40度、湿度40%というスタジオは、立ってるだけでもかなりツラい。そして、気持ち悪くなってくる。ここでヨガを30分だか40分だか続けるのは不可能だ。5分でもツラい。

講師が入ってくるまでの間、他の生徒は身体を動かしたり、先行してヨガのポージングを行ったりしていたが、僕は床に敷いたバスタオルの上に寝っ転がり「吐きそうや。吐いたらどうしよう……」とそればかりを考えていた。そして、講師がなかなか来ない。もしかしたら最悪の「講師が来る前にギブアップ」も十分あり得るぞと、暗い想像ばかりが膨らんでいった。

体感時間にして15分、実際の時間で5分ほどで講師の先生がやってきた。先生は坊主頭にしたインド人男性(スタジオ内にいた)かと思ったら、年齢不詳ではあるが可愛らしい金髪の女性だった。

先生が前に立ち、20人ほどの生徒全員が先生と対面する形でヨガ教室は始まった。僕は立ち上がっただけで、床との温度の違いにクラクラしていたのだが、必死で先生のヨガのポーズを真似て、どうにかこうにかヨガ教室の生徒にならんと頑張った。

最初はとてもツラかったのだが、先生の指導する呼吸法で少し持ち直し、なんとか「即ギブアップ」は避けられた。といっても、結局、本当に最後の最後、あと5分ぐらいで僕は体力的にどうしようもなくなり、先生に申し訳ないと手を合わせるジェスチャーで謝ると、一人スタジオから出て行ってしまった。

まだ時間内なのにスタジオから出てきてベンチでぜーぜーいってる僕を見た受付の兄ちゃんが、コップに水を入れて笑顔で差し出してくれた。そして、教室を終わらせた先生は僕とハイファイブをパチンと決めると「あなたよく頑張ったわよ!あれで良いのよ!良くやった!良くやった!」風な事を笑顔でまくしたてると「また来てね!」と言って控室に消えていった。これが僕の初めてのホットヨガ体験である。

しかし、結局、亜脱臼はいつもと同じ痛みを発しながら左肩に鎮座したままであった。

「1回のホットヨガでは治らんわな。帰国したらもうやっぱり病院に行こう」そう決意し、その日はくたくただったので早目にベッドへ入った。

その夜、疲れ果てて泥のように眠っている僕の体の中で、それこそ目が覚めるほどの大きな音で「ごっきん」となにかが鳴るのが聞こえた。そして、次の日の朝起きてみると、亜脱臼は綺麗さっぱり治っていた。

これがホットヨガのパワーである!(多分)

そんな訳で、亜脱臼に苦しんでいる方はホットヨガに行ってみるのも良いかもしれません。

ちなみに今回の僕の肩の痛みは亜脱臼ではない上に、医者も原因不明と言ってるので、誤魔化しながら過ごすしかないそうです。あらま。


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