2022年5月24日火曜日

21年前のホームページから4コマ漫画の再掲(6) 「なにコンとマーカ・テンドーさん」

昔の4コマ漫画
(素材:いらすとや)


21年前のホームページに掲載していた4コマ漫画再掲載プロジェクト・その6。

これは「第8回なにわのマジック・コンベンション(なにコン)」でのコンテスト出場の話ですね。

「マジック・コンベンション」がなになのか判らない人のために軽く説明すると、マジック道具の販売や、世界の有名マジシャンの実際の演技、マジシャン向けのレクチャーなどがあるイベントの事です。
基本的にお金さえ出せば誰でも入場出来ますが、お客さんの中心となっているのはマジシャンやマジック関係者です(マジックショーだけ別チケットで発売し、一般のお客さんはそちらでどうぞ、というコンベンションもあります)。

コンベンションでは、開催中にコンテストも行われます。一般的にステージ部門とクロースアップ部門の二種類は必ずあり、その他、短い時間で行う一発芸的な部門などもあったりします。

「なにコン」で僕らがエントリーしたのはクロースアップ部門で、これは解りやすく言えばテーブルマジックの事です。
演技時間は10分以内で、会場にはテーブルが用意されています。もちろん様々な理由でテーブルやその他の「なにか」を持ち込んで使用する人もいます。

クロースアップマジックのコンテストが他のそれと少し趣が異なるのは、同じ演目を複数回演じなければならない場合がある、というところです。試技と本番ではなく、本番が複数回あるのです。

クロースアップマジックはもともと少数の人に見せるためのモノなので、真に効果的にマジックを見せられる人数は限られています。そんな訳で審査員と観客の人数を絞って、その代わりに場所(部屋)を替えて何度もする、という形式を取ることが多いのです。

よくあるのは、コンテスト出場者をA、Bふたつのグループに分けて、それぞれ別の部屋でコンテストを同時にスタート。グループAの出場者は自分の出番が終われば即グループBの部屋へ、グループBの人も同じくグループAの部屋へ移動して2回演技を行う、という形式です。
噂で聞いた中で一番厳しいコンテストは、部屋を替えて5回連続で演技をしないといけないというのがありました。

幸い「なにコン」のコンテスト演技は2回だけですが、それでも連続二回をノーミスで終えなければならないというのは、コンテスタントにはなかなかのプレッシャーになります。

クロースアップマジックには「お客さんとのやりとり」もあるので、運が悪い時は最悪の結果で終わる場合もあります(お客さんが覚えたカードを完全に忘れる、とか)。とにかく、「コンテスト演技」で均質な内容を繰り返すというのは、なかなか大変なんです。

まあ、コンベンションとコンテストの説明はこのぐらいにしてと。

「なにコン」があったのは2001年11月17日(土)、18日(日)の二日間。
場所は今は亡きなんばの「MOTHER HALL」。旧なんば花月の場所にあった、主に音楽関連でよく使われていたホールです。

1コマ目で「風邪が治りきらず……」と書かれてますが、当日、僕は風邪で本当に具合が悪く、16、17日と連続で点滴を打ち、朦朧としながら会場入りしてました。

3コマ目はちょっと説明が要ります。
これは僕にとっても大切な思い出なので、ちょっと詳しく説明します。

マーカ・テンドーさんは、日本が生んだ超絶技巧の天才マジシャンで、ステージでカードを扱わせたら世界でも5本の指に入る、そんな人です。

そのテンドーさんが、僕らの1回目のコンテスト演技をじっと見ているのを僕は知ってました。僕は出演しながら、「(テンドーさんが)怒ってくるんちゃうやろか?」と、ふとそう思ったんです。

なんと言っても、テンドーさんは超正統派のステージマジックをする人なので、僕らがやってるような『ちょけた』内容のマジックを見たら「マジックを舐めるなー!!」ぐらい言いそうな、そんな気配があったんです。
実際のところ、テンドーさんだけでなく審査員を含め色んな人から非難される可能性のある演技内容でしたし。

とりあえず1回目の出番が終わり、控室に戻って反省点や修正点をヒオキさんと話し合っていました。すると控室入り口の暗幕が「バサッ!」と大きく開いたんです。
見るとそこにはマーカ・テンドーさんが立っていて、僕らを見つけると指差しながら「お前らー!!」と大股でドカドカとやって来たんです。

言うまでもないですが、まだ2回目の出演があるコンテスタント控室に出演者以外の人間が「乱入」してくることは、普通ありえない話です。

だから僕はこの時「あっ、殴りに来たんや……」と本気で思いました。
本当にそんな剣幕だったので。

でも、テンドーさんは、笑いながら強引に僕の手を握り

「めちゃくちゃ面白かったよ。次もあるんだろ?もう一回観るよ!」

と言って、ご機嫌さんで控室を出ていったのでした。
いや、紛らわしいな!

でも、これは本当に嬉しかったです。
テンドーさんが気に入ってくれたんなら、後はまあもうどうでも良いかと思えましたし。

ともかく、そんなこんなで2回目の出番も無事こなし、僕らは初めてのコンテスト出場で準優勝という望外の結果を得たのでした。


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