2021年1月14日木曜日

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記 (20)

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記もくじ

謎の遺跡だか史跡だかの正体が皆目解らず「ウラジオストクのインディー・ジョーンズ」になれなかった忸怩たる思いを胸にホテルへの帰路についた我々だったが、その途中にあるIMAXシアターの目映く輝く照明を見て、「しまった!このビルも昼間は調査していないぞ!」とどうでも良いことに気が付いてしまった。

IMAXシアターの照明に誘われ、我々は内部へと

確かにどうでも良いことではあるが、気が付いてしまったので仕方がない。内部を探索して行くことに即座に決定し、足音も高らかにドカドカとビルに侵入した。

内部には小綺麗なゲームセンターがあった。

「ゲームセンター」というか、いわゆる「アミューズメント施設」という方が合ってる感じで、ビデオゲームよりも景品を取るコインゲームの方が多く、遊戯対象はかなり低年齢向けに設定してあるようだった。
そして、そんな低年齢の子供を守るためか、一人いかついガードマンが椅子に腰掛けながらも、鋭い視線で辺りに睨みを効かせていた。

ロシア感ゼロのゲームセンター(一部)
ビデオゲームの数は多くない

あと、映画用の複合施設なので、当然映画のキャラクターグッズなども販売している。
日本のものはジブリ関連がやはり多く、他にも漫画やアニメの商品が結構な数置いてあった。

日本のアニメや漫画のマグカップ・タンブラーコーナー
欲しい物が見つかった方は今すぐにウラジオストクへ

さらに、このアミューズメント施設にも小さいながらも例のB.B弾を使う射的屋があり、それを見つけた井上くんは「ちょっと、撃ってきますわ、へへへ」と、引き金を引くゼスチャー付きでブースに取り付いた。

井上くんがお金を払い、スタッフがB.B弾を装填し、エアガンの使い方を説明している時、我々の後ろからまさにベロベロに酔っ払ったと形容するに相応しい千鳥足で、一人の男が近づいてきていた。

その男は、説明を聞き終えて遠慮がちに一発二発シュポンシュポンと弾を撃っていた井上くんを見つけると、肩をポンポンと叩いてよく判らないロシア語を大声でまくし立てると、井上くんから銃を取り上げ、バジュバシュバシュバシュバシュバシュと勝手気ままに撃ちだした。

乱入してきて銃を撃ちまくる赤いおっさん
ベロベロである(笑)
店員さん(青い服)も心配そうに見ている


「よし、俺の教えた通りにやってみ」と言いたげな赤いおっさん
ロシアなのでモデルガンがAK系列なのがニクイですね!


終いには店員までカウンターから出てきて撃ちだす始末
君たち誰の金で遊んでるんだね?(笑)

おっさんはひとしきり撃つと「な、判ったやろ?」みたいな顔をして井上くんに銃を返し、射撃指導を行いだした。
そして、僕にも「よし、お前も撃て!」とばかりに銃を渡し「指導」をし始めた。
さらに、それら一連の行動を見ていて面白くなったのか、最終的には店員さんもカウンターから出てきてバンバン撃ち始める始末。人が買ったB.B弾やのに(笑)

弾が尽きると赤いおっさんは、また大声でよく判らないロシア語を叫びつつ千鳥足で去っていった。
こうして井上くんの「ロシアで初めてのB.B弾射的」は、本人がほとんど撃つことなく終了したのであった。

現金をそのまま掴み取るというワイルドなゲーム筐体もある
お金を入れると風が巻き起こり、お札が舞うのだ!

IMAXシアタービルを堪能した我々は、ようやっと ”クレジットカード使用不能男” の待つホテルへと、いやその前にロシアン・コンビニに立ち寄ることにした。

このコンビニは、普段我々が日本でお世話になっているコンビニよりも、どっちかと言うと「24時間開いてる小さなスーパー」という方がイメージ的には適切である。もしくは田舎にあるような雑貨屋さん。そんな雰囲気。

こんなに立派な肉類が大量に売ってある
店内は狭いがチーズ、パンだけの棚も別にある


お気に入りの"fuzetea"もいろんな種類が大量にある
これ日本でも売ってくれんかな~


夜風に吹かれてアイスを食べる計画


会計を先に済ませ、まだ品物を選んでいる井上くんを店の前で待ちつつ、今買ったばかりのアイスを食べていたら、ふいに被ってる帽子を引っ剥がされ、そしてドンと体当たりを喰らった。

見るとそこには僕のピンクカモフラージュのブーニーハットを被った笑顔の女が「ビジョー、ビジョー!!」と大声で喚いていた。
こ、怖い……。

恐怖の「ビジョー女」

一体全体どういう要件なんだ?と思っていると、女はまた「ビジョー!」と叫んだ。

「ビジョー!」
「ビジョー?」
「ビジョー!!」
「ビジョー??」
「ビィジョー!!!」

なんやこのアホみたいな会話(笑)

ビジョーってどういう意味なんやろ?と思って相手をよく見ると、自分を指差して「ビジョー」と言っている。

「もしかして『美女』って言ってんのか?えらいマニアックな日本語やな」

そう思いつつ「美女?美人?」と言ってみると、顔をパァァァと明るくして

「ビジン!ビジョー!ビジョー!!ビィィィジョォォォォォーー!!!」

と余計大声で騒ぎ出した。
言わんかったら良かった……。

どうやら彼女は「美しい女の人」という意味の日本語である「美女」という単語を知っていて、それを使って日本人である僕と会話をしたかったようだ。
会話になるかそんなもん(笑)

とにかく、相手の意図は判った。

相手を指差して「ビジョー」と言うと相手は喜ぶ。
これで相手の要求も、こちらのミッションも終了だ。
そこで僕は手を差し出す。
すると相手は笑顔で手を握ってくる。

いや、違う!
帽子を返せって意味やから!

「ビジョー」である私の写真を撮れとアピール
何度もポージングをするので疲れた
はよ帰らせてくれ(笑)

それからもロシア語と日本語のまったく噛み合わない会話は5分ほど続き、アイスクリームをよこせだの、私のジュースを飲めだの訳の分からない要求が続いた後、ようやく帽子は返還された。

時計を見ると約束の1時間はもうすぐだった。
足早にその場を離れた我々は、やっとのことでホテルまで帰り着いたのである。

ちなみに彼女も酔っ払ってたみたいです。
いや、ホント、酔ってるロシア人は強い(笑)

(21) へつづく

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