2021年1月16日土曜日

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記 (21)

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記もくじ

予定の中座時間をきっちり使い切ってホテルに帰ってきてみると、クレジットカード使用不能マン ー 長いので今後はアイくん(仮称)とする ー が我々と同じくイースタンドリーム号でロシア入りした別の日本人男性二人組と談笑しながら、善後策を練っていた。

おお、これは良い!と即座に思った。
なぜならこの二人組みは我々二人とは違い、とても真面目で頭も良さそう(実際良いのだ)だったので、なにか良い解決策を見出せるのではないかと、そう思えたのだ。

そこで僕は、この「賢い方の二人組」に、我々が単に晩御飯を食べて、ぶらぶらして、エアガンをぶっ放して帰ってきたのではないという事を理解してもらうために

「たまたま寄ったIMAXシアターにATMがあったから、いっぺんカードがどんな風に使われへんのか見てみようや。いやホンマ、たまたま寄ったんやけどな、たまたま。なあ?」

と「たまたま」を強調しつつ、提案力と観察眼の鋭さをさり気なくアピールしてみた。

するとこの提案はすんなり可決され、アイくん、我々、賢い方の二人組という総勢5人にも上る一大軍団が一路IMAXシアターへと突き進むこととなったのである。

目つきの異常に怖いガードマンの横を抜け、いざATMと対面である。一体どのような「エラー表示」が出るのか?それによって今後の運命も多少は変わってくる。

まずは「IYOCA JCB」カードからだ。

画面の有効面積のおよそ90%を使い力強くエラーを主張するATM
巨大な「バツ」表示に一同も驚きの表情
さすがロシアのATMはひとあじ違うぜ!

やはり使えない……。
そしてVISAカードも同様に使えなかった。

ただここでアイくんがとんでもない事を言い出す。

「PINコード合ってるかな?なんか自信ないような……うーん、あれぇ?」

自分が設定したPINコードの記憶が曖昧だと言うのだ。
いや、さすがにそれは我々ではどうしようもないし、合っててもらわないと困るんだけども……。

「さて、どうしようか?」という雰囲気になったところで「賢い組」のAくん(仮称)が、VISAカードの方はWebから設定を変更してやれば、使用可能になるかも知れないと、新たな情報を提供してくれた。
そして、「IYOCA JCB」の方は、エラーの詳細が知りたいので別の機種のATMでも試してみようと、研究職らしい事を提案した。そうだ!解決への道のりはサンプリング数が命だ!

僕としても、このIMAXシアターのATMを離れることには完全に同意見であった。
なぜなら、我々5人がATMの周りに居ることで現地のロシア人の「ちょっとそこどいてくんないかな?」的オーラと、ガードマンの「お前らなにか犯罪行為をしてるんじゃないだろうな?」という眼からのレーザービームに耐えられなくなってきたからだ。

多分みんなもその辺の空気感はひしひしと感じていたのだろう。Aくんの提案はこれまた即可決され、我々5人はIMAXシアタービルから退去し、歩道にあるビルの壁埋め込み型のATMを探す旅へとすみやかに移行したのであった。

ビルの壁埋め込み型ATMで試すアイくん
結局、ここでも全く同じエラー表示が出て終了
出金への道のりは遠い

幸いにもATMは通りにたくさんあったので代わりはすぐに見つかったのだが、残念ながら結果は全く同じだった。

ただ、これらで得られた知見は貴重であった。
エラーの内容は「(日本の)銀行からの返答がないからお金は出せない」という意味で、「IYOCA JCBカード」自体はきちんと生きていてちゃんとロシアのATMでも問題なく使用できている事までは判明したのである。

この時、すでに現地時間で深夜0時を大幅に回っていたので、この時間は日本・ロシア間の通信が止まっているのか、日本の銀行が「寝ている」のか、そのどちらかで返答がないのではないか?と予測し、明日のお昼にまた試してみようという事で「IYOCA JCBカード」の処遇は落ち着いた。

深夜1時を過ぎてなおネットで有益な情報を得ようと調べる面々
照明が落とされ薄暗くなったロビーでスマホの画面だけが煌々と輝く
頑張れ賢い方のチーム!
頑張れ井上くん!
俺は限界だ!(笑)

一旦、ホテルに帰った我々5人は、JCBやVISAの「ご利用について」の冊子を隅から隅まで読み、なにか設定し忘れているところや、海外での連絡先・利用先などを調べ、さらにネットになにか同じようなトラブルを克服した人の手記がないかなど、徹底的にリサーチをした。
そして、その結果判ったのは、今のこの時間ではやれることはほとんどなにもないという事実であった。

アイくんは明日の午前中に大陸横断用軽自動車を通関事務所まで引き取りに行かねばならないという事なので、明日の午後にもう一度合流して、そして銀行に行って銀行のATMでもう一度カードを試してみようという事でこの日はお開きとなった。

明日の朝食のお金がないアイくんは、井上くんがウラジオストク到着後10分で「なんやらスタン人」からもらった巨大なパンを抱えて自分のホテルに帰っていった。

こうして我々のウラジオストク1日目は幕を下ろしたのである。

(22) へつづく

.

0 件のコメント: