2021年1月12日火曜日

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記 (19)

 おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記もくじ

クレジットカード使用不能マンから一時の中座をもらった我々は、かなり遅めの晩ごはんを食べに通りへと出た。

通りにお店はいくらかあるのだが「純ロシアお食事処」のような店舗はなく、あるのはなんとなくオシャレにしたカフェで、「ついでに食べ物もどうぞ」というような、帝政ロシア時代からは完全に切り離された「ちょいとイキった軽食」を提供してそうな、そんな店ばかりであった。

そこで我々は、お昼に行った海沿いの公園の「大人&飲食ゾーン」で、ぶらぶら買い食いすることにした。

僕はとにかく素早く腹を満たしたいという気持ちも強かったので、飲食ゾーンに入ってすぐの店で、「形が面白いから」というおおよそ飲食物を購入する場合にはまず成功しないであろうものを論拠として、謎のデカイ肉まん風のなにかを買った。

形が面白いだけで選ばれた肉まんのようなもの

ソフトボールの3号球をさらに一回り大きくしたような丸っこいボディに、オールブラックスのシダを思いおこさせる生地の接合部。さすが「見た目」で選んだだけあって、面白く美しい造形である。

ただこれ、味の方はさっぱりで、内に入ってる具は薄味を通り越して無味であり、そのくせ大量の肉汁が内包されているのでひとかぶりするだけで手がベトベトになり、テーブルにも巨大な肉汁湖を形成してしまうという、まるでオススメ出来ない食べ物なのである。

やはり「形が面白いから」で食べ物は買ってはいけない。

もし試しに食べたいという奇特な人がいるならば、チューブのカラシでも持参していれば多少はマシに味わえるかも、とアドバイスしておきます。ちなみに100ルーブルです。

暗闇に浮かび上がるコカ・コーラの冷蔵庫
キリル文字で書かれた「Кока-Кола」のロゴは今や昔の話だ

とりあえず、軽く食べたことによって元気を回復した我々は、お昼は見ることが出来なかった「大人&飲食ゾーン」の最深部まで突き進むことにした。

B.B弾を使うタイプの「射的屋」
このタイプの射的屋は人気なのか、そこここで見る
ここは見た中では一番大きな射的屋だった

もう時間が遅かったせいかかなりの店が閉店済みで、照明も落とされていて通りは薄暗かった。アルコールを提供しているお店はまだ開けていたが、それでもカラオケや「踊れるお店」はガラガラで、店員はスマホを見て時間を潰していた。

椅子がブランコになっている野外のバー
ブランコが大好きな僕は一発で気に入った(笑)
いつかこんな店を持てたら良いな!
誰か一緒にやらんか?


浜辺に置いてあるベンチ
若者たちがこのベンチを使い輪になって語り合ったりしている


三角の部分をこのように使ってくつろぐ事も可
(くつろぎモデル井上くん)


ずんずん通りを進んでいくと、とうとう店はなくなり辺りは暗いだけの空間となった。
もうなんにもないから引き返すかと言うと、井上くんが妙な事を言いだした。「この先に、遺跡だか史跡だかがあるんですよ」と。

とてもこの先に遺跡や史跡があるようには見えなかったが、彼は「なんかガイドブックに書いてあったんですよ」と言って先に進み始めた。

1,2分歩いて、その彼が言う「遺跡だか史跡だか」の前まで来た。
それは海に突き出た壊れかけの桟橋を小さく鉄柵で囲ったもの、としか形容の出来ない物だった。

遺跡だか史跡だかの全景
「なんなんこれ?」
「さあ?」
詳しいことは全く解らなかった……

これがなになのかを近寄って調べるには海に落ちる危険性も考慮に入れねばならず、またうかつに近寄って、もし地元の人の反感を買うような事態になれば、これもまたやはり海に投げ捨てられる可能性があり、調査することが海水に浸ることと非常に密接な関係性にあることを看破した僕は、一言静かに「帰ろ」と言って、ホテルの方向へと歩きだしたのであった。


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