2021年1月20日水曜日

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記 (23)

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記もくじ

8時頃に井上くんと「本日の予定」の確認が済み、9時15分頃から出発する運びとなった。

予定担当大臣の井上くんの説明によると、この日は自動車博物館と「なんとか市場」に行き、13時頃にはホテルに帰ってきて、例のアイくん(別名:クレジットカード使用不能男)の面倒を見て、さらに夕方から鷲の巣展望台へ出向き、昨日乗れなかったケーブルカーと美しい夕陽の写真を撮ります、えっへん、おっほん(咳払い)といった予定なのだそうだ。

ま、どんなに事細かに予定を説明されても、僕はなにも分からないので「なるほど」とか「これは分刻みの予定やな」などど、いかにも判ってそうな雰囲気を醸し出しながら、意味的には情報量ゼロの相槌を打っておく以外なにもやることはなかったのであるが。

とりあえず時間になり、電気が溢れるほど充電したモバイルバッテリーとカメラをバックパックに積めた我々は、昨日群衆にもみくちゃにされた沿海行政府ビル方面へと歩き始めた。

ホテル出発後3分で冷たいジュースを買う井上くん
ロシア風の屋台・出店ですかね、これは
この日は朝から暑かったのでまあ買いたい気持ちは分かる


ちなみにこれはロシアの街角キオスク(?)
街中のいたる所にあり、この中に店員さんが居る
ガラス張りの店舗にこれでもかと商品が詰められて売られている
タバコ、新聞、食べ物、飲み物、はがき、おもちゃ類等々なんでもある
死刑囚との面会かと思うぐらい小さな受付窓口で商品のやり取りをする


これは沿海行政府ビルの前の通りです
この写真を見てなにか違和感を憶える人いますか?


この写真ならどうでしょう?
この建物 格好いいけど、なんか変じゃないですか?
上は超モダンなガラス張り、下は古いヨーロッパ風


実はこの下の建物、工事用の防音シートに描かれた絵なのだ
とても上手く町に馴染んでいたので完全に騙された!
こういうの良いですね!


我々がバス停に着くと同時にバスもやって来た
この「31」の別名「掛布バス」が我々の命運を握っているのだ!
井上くんがすでに袖まくりをしているのに注目
とにかくこの日は暑かったのだ

我々がバス停に着くやいなやバスがやって来て、スッとドアが開いた。お抱えのリムジン並みの心地良いタイミングである。

バスに乗った我々は、昨日の「コケかけて乗客の腕をがっちり掴み気まずい雰囲気事件」の教訓を生かして、一も二もなく座席に着いた。
バスはドアを開けたままにじりにじりと動いており、乗りたい人はその動きに合わせてポンポンと乗ってくる。運転手も「さ、今からが明確に出発ですからね!」、みたいなアナウンスは一切せず、停車と出発が曖昧なままバスはバス停を徐々に離れていった。

バスが安定走行になったところで井上くんが説明する。

「このバスに乗ってたらそのままチョクに自動車博物館に行けるんですけど、それじゃちょっと面白くないんで~、途中で電車に乗ります」
「うん」
「で、電車も終点まで行ったらすぐ自動車博物館なんですけど、それじゃちょっとすぐ着きすぎるんで、一つ前ぐらいの駅で降りて歩いて行こうかなと」
「なるほど」

彼の言った旅程はこうである。

「自動車博物館までの全行程図」
31番のバスを利用すると自動車博物館までは乗り換えなしで行ける
ただそれだと行程が単調なので、「ルゴヴァヤ」で一旦途中で降りて
路面電車にわざわざ乗り換える
「ルゴヴァヤ」は全行程のおおよその中間地点
ヤマトで言うところの「バラン星」である
(クリックで拡大)

僕は異国では電車やバスに「一回は乗りたいけど、でもそんなに乗りたくない派」である。
「まったく乗りたくない派」や「とにかく乗りたい派」ではないところがややこしい(笑)

なんと言うか、駅構内や電車・バスも見るべきところがあって面白いんだけど、2,3駅も乗ると割とすぐに飽きてしまう、というのが主な理由である。

多分、井上くんは、こういった僕の面倒くさい性格を見抜いた上でバス、路面電車、徒歩とバランス良く配合された旅程を計画してくれたのだろう。
うん、さすがは予定担当大臣である!エライ!

ちなみに、ウラジオストクのバス、路面電車は「キロメートルあたりいくら」ではなく「乗ったが最後の固定料金制」なので、ひと駅で降りても、始点から終点まで乗っても料金は同じである(バス:23ルーブル、路面電車:16ルーブル)。

だから、途中で乗り換えたりしない方が絶対にお得なので、目的地が同じなら乗り換えずに乗り続けましょう!

という訳で、登り坂を2速でひっぱりまくってディーゼルエンジンの破壊的な音が響くバスの中、僕は子供のように23ルーブルを握りしめて、降車のタイミングはいつなんやろ?と薄ぼんやりと考えながら車窓を眺めていたのである。

時計はまだ9時40分であった。

(24) へつづく

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