2022年1月17日月曜日

飲み終わったら終わるラジオ(12) 「マジックの話」

まずはこの12分程の動画を見てやって下さい。


今回も後輩芸人の福人(ふくんちゅ)君のYouTube番組にゲスト出演してました。

今回の一文字は「む」、そこから手品の話をいくつかしました。


僕は普段は手品関連の話は滅多にしないのですが、うまく話題に誘い出されたという感じで、ちょっと照れくさい感じですね。

さて、マジックの歴史は諸説ありますが、というか確定的な説は全くないと思いますが、おおよそ宗教や呪術、医療などと強く結びついていたとは思われます。
集落などで実力者たる力を得ようとする時に、こういった魔術的な力は大いに役立ったでしょう。

経験的に得られた気象や動物の生態・薬草などの知識と、その知識を総体として活用した言語化出来ない「勘」や、「薬草」を使って不思議な声を聴ける能力、などが最初の魔術だったと思います。日本では卑弥呼もその類だったという説もありますね。

昔むかしは「腕前が上の人」は、「うまく説明できないけど明らかに他の人より上手い」ということで、「神がかり的」だったり「魔術的」だったりした訳です。

そんな訳で、遠い昔のマジック的ななにかは「権力」と深く結びついていて、とても大衆のものではなかった訳です。どちらかと言うと大衆はマジックに従わせられる側だった訳で。

次に来たのはおそらくゲームでのイカサマや必勝法で、この辺りから本格的に現在のマジシャンに近くなっていくようです。実際、カード(トランプ)マジックの源流はズバリ カードゲームでのイカサマです。

よく「手を早く動かせる人がマジックを作ったんじゃないか?」という人がいますが、多分、それはないです。
マジック界での有名な格言に「手は目よりも早く動かせない」というのがあり、どんなに素早く動かしても見る人の目は誤魔化せないのです。

ま、ともかく、現在のマジシャンという不思議を売る職業は、根っこの方で宗教、医術、権力者および権力者に取り入ろうとする者、腰巾着、大道芸人、詐欺師にギャンブラーと、性格の違う様々なモノと深く複雑に結びついているのです。
だから胡散臭くても仕方がないような気もします。

####

ちなみに、カードマジックの源流がカードゲームでのイカサマ行為にあるとしても、現在のカードマジックの技法はとてつもなく進化しているので、現在では全く「別の用途」のものになっていると言えます。

あと、カードマジックでギャンブル的な演出をする場合もありますが、あれはあくまでも「マジックの演出としてのギャンブル風」であって、実際にどんなに上手いマジシャンであっても、カジノなんかではその技術はまず発揮できません。

それは、カジノとマジックでは、カジノの方がカードや「手」の扱いが何十倍も厳格だからです。

この辺が「お金を賭けるカジノ」と「娯楽としてのマジック」の違いです。
マジックは「疑われてもネタがバレなければOK」ですが、カジノや賭場では「疑われるだけで命取り」なのです。

要するにカジノでは「シャレ」は通用しないのです。

####

ところで、僕が「マジックをしないマジシャン」として活動を確立できたのは、以前出演していた三宮の「ハッピー工場」というお店の店長さんのおかげなのです。
このお店は、毎日18時~23時までの間はマジシャンがいるというお店で、僕はこの店に所属していた10人程の日替わりマジシャンのうちの一人だったのです。

僕の「極力マジックをしないでお客さんの対応をする」というスタイルは、見る人によっては「サボってる」ように見える。
実際はマジックをしないでお客さんの対応をする方がよっぽど難しいのだけど、「マジシャンがマジックをしていない」という点においては「サボってる」と捉えられても仕方がない部分はある。他のマジシャンがお客さんにせっせとたくさんのマジックを見せていれば、余計そうだ。

でも、ハッピー工場の店長さんは「あれがテツローさんのスタイルやから」という事で、アルバイトや店員さんに、「テツローさんのやってる事にあれこれ言わないように」と釘まで刺してくれていたそうなのです(後々知ったことですが)。

そのおかげで僕は徐々にやるマジックの数を減らし、とうとう「本日のマジシャンです」と自己紹介して後、ひとつもマジックをせずお客さんのテーブルを離れるという荒業を達成できるようになったのです。

という事で、あの時のA店長、本当にありがとうございました!
A店長は今も三宮で別の飲食店をやっておられますが、今はこんな時節なのでなかなかお目にかかれません。でもまた必ず寄せさせて頂きます(なぜか僕が行った日は休んでるパターンが多いんですけど)。

そんな訳で、これを読んだ人はA店長の今のお店、三宮の「ひびき家」にぜひ食べに行こう!


ハッピー工場閉店の顛末はこちら↓

ちなみに、マジックバー等で出演依頼があり「俺はマジックせえへんけど、それでええの?」というと「全然、それで良いですよ!」と返事が返ってきますが、実際にマジックをしないと「やっぱり、もっとマジックして下さい……」と言われることは良くあります。
本当に良くある。

マジックをしなくても良いマジックバーならいくらでも働きたいですが、そんな求人は世の中にはないのです。あら残念。


ではまた!

0 件のコメント: