2021年2月1日月曜日

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記 (31)

おろしや国無酔譚 ウラジオストク滞在記もくじ

自動車博物館とキタイスキー市場、おまけにフリーマーケットとささやかな路面電車の旅を楽しんだ我々は、この旅行の最大のトラブルボーイこと ”クレジットカード使用不能男” を助けるためにホテルへと戻った。

ホテルに戻ったのは13時半頃で、クレジットカード使用不能男のアイくんはまだ来ていなかった。
ま、彼は彼で、ホテルをチェックアウトして、車を引き取りに行って、今回のロシア横断旅行のコーディネーターに事情を説明し、クレジットカード会社に連絡をとり、自分の親に現状報告をしなければならなかった訳で、なかなか大変な午前中だったのだろう。

そんな訳で我々は、淡々とカメラのホコリを落とし、バッテリーの充電を行い、本を読んだり、オヤツを食べたり、ヒンズースクワットをしたりして彼が来るのを待った。

1時間ほどしてからアイくんが車でやって来た。
つまり、とりあえずは車の通関手続きと引き取りには成功したということだ。これすら成功してなかったら、もはや彼の旅は助けようがなかったところである。

こいつがアイくんの相棒「SUZUKI WAGON-R」だ!
日本のナンバープレートが光る!


で、彼の現状であるが、まず銀行のカード(IYOCA JCB)は、JCBカードとしては利用出来そうであるが、ロシア国内でJCBを利用出来る店舗がどれほどあるのかは未知数である、というのと、クレジットカードは今日は無理だが二、三日、遅くとも一週間以内には使えるようになるらしい、とのことであった。
つまりどちらのカードも今日のものにならなかった訳で、すなわちこれからしばらくは、生活費もなにもない極東ルンペンプロレタリアート生活に身をやつさなければならないのである。

そこで我々は昨日の夜に決めてあった「Plan B」を実行することにした。
それは「彼の親に連絡して当面の生活費を井上くんの銀行口座に振り込み、井上くんが横領ロシアのATMからそれをルーブルとして引き出して彼に渡す」という作戦である。
井上くんの銀行がワールドワイドに提携をしている有名巨大銀行だったので可能となった作戦である。
聞けばアイくんの親はすでに振り込みを完了しており、あとは井上くんが逃げるだけ引き落として彼に渡すだけでこのミッションは完了する。なんだ、簡単だ!

じゃあ、さっそく一番近いIMAXシアターのATMでお金を下ろして、それからご飯にしようと即決。
面白がりの僕と井上くんは、歩いて2,3分の距離にあるIMAXシアターまで、彼の運転する車に乗せてもらって行くことにした。

海外で自分や自分の知り合いが運転する車に乗るのは、なにか異様に楽しいものである。それをロシアで味わおうという心づもりであった。
ところが、この時非常によく判ったのだが、アイくんは都市部での車の運転にまったく慣れていない。というか運転自体にぜんぜん慣れてない。
「ロシアで楽しいドライブを」という構想は、乗車後2秒で崩壊した。

「はいはい、前見て前」
「ウインカー、ウインカー」
「後ろの車待ってくれてる。入れてくれるから入ろう」
「今、(シフトが)バック。ドライブに入れて」
「ドライブ、ドライブ(に入れて)」
「はい、行って行って」
「横断歩道、人おるよ」
「停まって、停まって」
「横断歩道停まって!」
「ロシアでは横断歩道に人がおったら停まらなアカンねん」
「渡ったら左」
「左、左」
「そこ左」
「左や言うてるやろ!(怒声)」
「合流、合流」
「入らな、右側(車線)が困るからどんどん入る」
「頭入れて」
「前詰めて詰めて!」
「あのトラックの後ろにつける!」
「で、あそこ左」
「あの遮断器みたいな所」
「左!」
「左、左!ひーだーりー!」
「左や言うてるやろ!(怒声:二回目)」
「前の車下がってくるかもしれんから一旦停まって」
「停まって、停まって」
「ケツ(バック)から駐車しようとかええから」
「違う!そこは駐車スペースじゃない!」
「あそこの角、あそこ空いてる!」
「頭から停めよう、頭から」

と、とてもにぎやかな車内であった(笑)

IMAXシアターの駐車場に収まったWAGON-R
駐車スペースが余りまくっている(笑)
よく見ると初心者マークが貼ってある(実は後ろにも貼ってある)
ロシアで若葉マークは通用するのだろうか……?

ともかく、目標のATMを目の前にした我々は、それぞれが

「さあ、ここのATMでサッとお金を下ろしてご飯を食べに行こう!」

などと考えていた(に違いない)。

ところが、これが一筋縄ではいかなかったのである……。

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