Good Players Club |
久しぶりに開催されるGPCの「第10回グランドチャンピオン大会」を覗きに行ってきました。
グランドチャンピオン大会は2020年からのコロナ禍において20、21、22と三年連続で開催が中止され、実に4年ぶりの大会となりました。
GPCの記事を書くのは実に2016年以来と、こちらも長らくのご無沙汰でした。本年からはまたちょっとずつ書くと思います。一応、僕も今でも大阪著名人リーグに所属しているので。
まあ、それはさておき。
開会に先立って、去年亡くなられた来賀友志先生と大阪リーグのじゃんぼ。氏、その他コロナ禍等々で亡くなられた方へ向けて一分間の黙祷が捧げられた。この数年、本当にいろいろな事がありました。そのほとんどは残念な事ですし、今も「良くない事」は続いています。早く平穏な世界に戻って欲しいものです。
さて。
この大会はGPCの16ある各リーグから、それぞれの成績優秀者をリーグの代表として選出してもらい、総勢64人からたった一人のグランドチャンピオン決める、という大会。
大会の参加リーグは以下の通り:東京、東京著名人、大阪、大阪著名人、神奈川、名古屋、静岡、千葉、北海道、京都、徳島、岡山、鹿児島の13リーグ(順不同)。
大会ルールは、まず予選3回戦の累積得点で上位16名を決め、その16名で準決勝4卓を立て、各卓のトップ4名で決勝戦を行う、というものである。準決勝からはそれまでの得点は関係なく、とにかくその卓でトップを取れるかどうかの勝負となる。
予選中の役満その1「大三元テンパイ」 これは残念ながら流局でした (東京著名人リーグの増田将也さん) |
予選中役満その2「国士無双」 これは和了ってます (京都リーグのトシさん) 振ったのは大阪著名人リーグの藤岡信三さん ええ?いや、ちょっと藤岡さん! 「テンパイとったら振っちゃった」 藤岡さんあえなく予選落ち |
予選3回戦の結果、大阪著名人リーグは現グランドチャンピオンの夢野さくらさん、半笑いさん、黒岩悠さんが、大阪リーグからはsugiさんが準決勝に進出。大阪勢強し。
逆にGPC発祥の地である東京は、著名人リーグ、一般リーグ合わせて一人も準決勝に進めず、これには片山代表も「これは、やってしまいましたね」とうなだれる他なかった。
そして、残念ながら大阪勢の四名も準決勝であえなく敗退。グランドチャンピオン10期のうち半数の5期を大阪勢で占めるという野望は幻に消えた。そんな野望があったのかどうかは知りませんけども。
会場内では麻雀をモチーフにしたアクセサリが販売されてました 結構な売れ行きでした (一条いろはさん作) |
さて決勝戦である。
決勝卓に残ったのは
- 千葉リーグ:足立の料理人
- 徳島リーグ:伊藤和樹
- 岡山リーグ:大國
- 千葉リーグ:さくま
かつて第8回グランドチャンピオンを輩出した地である千葉リーグは貫禄の二名進出。そこへ新進気鋭のリーグである徳島と岡山が「もはや東京・大阪・千葉の時代ではない」とばかりに勝ち上がってきた。
決勝開始前の和やかな決勝卓 みなさんの服の色が違って非常に判りやすい 親の大國さん(赤)、さくまさん(灰)、伊藤さん(黒)、足立の料理人さん(白) |
決勝戦と並行して親睦麻雀も行われています こちらは東京・大阪の著名人リーグ対抗戦の様相 起家からスタジオカドタ、夢野さくら、とうちゅう、たかしまめい(敬称略) 大阪の二人はグランドチャンピオン経験者だ 負ける訳にはいかない! |
ちなみに今回は決勝卓の配信も録画もないという事だったので、決勝の、特にオーラスを少し詳細に記録として残しておきます。
東一局からの点棒の流れを僕は記録していなかったのでそこはいい加減なのだけど、とりあえず東四局開始時には、さくまさんが唯一の3万点超えで
- さくまさん:35,400
- 足立の料理人さん、大國さん:22,200 (同点)
- 伊藤和樹さん:20,200
南四局には
- 東家:足立の料理人さん 15,000 (トップと21,300点差)
- 南家:大國さん 18,500 (17,800点差)
- 西家:さくまさん 30,200 (6,100点差)
- 北家:伊藤和樹さん 36,300
現状四着の足立の料理人さんは、点棒状況的には苦しいが親なので連荘があるし、よもやの満貫直撃やハネ満ツモも十分に考えられる。
二着のさくまさんはトップから満貫圏内なので十分射程距離である。もし、七対子ドラドラでも出れば、美しい「シバ棒差の逆転勝利」となる。
三着の大國さんは二人に比べるとかなり苦しい。ハネ満直撃か倍満ツモというのは、赤のないGPCルールでは相当厳しいと言わざるを得ない状況。
そんな状況確認を各人が行いながら、足立の料理人さんがサイコロを振る。左4と目が出た。ドラは六筒。大國さんの配牌。
ドラ含みメンツがあり 678,789の三色目があるが、だとしてもこれをツモ倍まで持っていくのは相当難しい。周りの三人はさっさと和了りを目指してしまうかも知れない状況なので、打点の高さと共にスピードが要求される。
「やはり難しいか?」と思ったが、しかし、ここからのツモが凄まじかった。上記配牌から
とツモって手牌はこうなる
ムダヅモは唯一二筒のみという最速かつ高目ツモならダマでも倍満のテンパイが完成。とどめを刺す最終形に迷わず即リーチと打ってでる。
このリーチで大國さんの下家である二着のさくまさんがツモ八筒で悩む。
現状ピンフのみのイーシャンテン。リーチに対してこの八筒は厳しい。しかし、さくまさんは一瞬うんうんとうなずくと、力強く八筒をツモ切った。「点差的に大國さんは自分からは和了れないはず」という考えがあったのかも知れない。
トップ目の北家は二筒、親は白(生牌)を切って、大國さんの一発目のツモ。これは一筒で不発。
二周目となったさくまさんのツモは大國さんの高目和了り牌である六索。例えこれをツモ切っても当然大國さんは和了らなかったと思うが、さくまさんはこの六索を手牌にしまい、一旦一筒に手をかけたが、小考し二筒を切った。
トップ目の伊藤さんがノータイムで東を切った後、親の足立の料理人さんがツモ牌を見て悩む。意を決して手牌から打ち出した牌はドラ表示牌の五筒。二筒と八筒が通ってるとは言え、かなり厳しい牌だ。親の手も出来上がりつつあるのかも知れない。
大國さんのツモは三筒。あの最速のテンパイを見ていた者にはもどかしいツモが続く。
リーチ三周目に入ってさくまさんのツモは四索。そして、ここでさくまさんが大いに悩む。
テンパイであるが、ピンフのみである。この手で6,100点差をまくるには、リーチしてツモった上に裏イチ条件となる。これは決勝戦という事を考えると気持ち的にはちょっとシンドい。
一旦、一筒を切ってドラツモや三色に賭ける手も当然あるが、その場合はフリテンツモのケースもあるだろう。
さくまさんは、腕組みをして背もたれに大きく沈み、前かがみになって手牌と場況を見、点数表示板を指で何度も確認し、再度手牌の並びを見た後、腕組みをしてもう一度背もたれに身体を預けた。
額に手をやって起き上がってくると、親の河をジッと見て、手牌の一筒を伏せてからつまみ上げ、「リーチ」と発声した。この間たっぷり一分が経過していた。
囲碁や将棋と違い、麻雀の一分は長い。かなりの長考である。
二着目からのリーチにトップ目の伊藤さんは小考した後に白をツモ切り。親である足立の料理人さんは北をノータイムでツモ切った。
そして、大國さんのツモ。
これがなんと六萬……。
同じ「6」でも、六索ではなく六萬。
河に出た六萬にさくまさんからロンの声がかかり、手牌が倒される。リーチ一発ピンフ。この瞬間、リーチ棒を入れてトップまで4,900点返した事になる。しかし逆に、ここで裏が乗らなければ1,200点ショートしたままゲームは終了し、伊藤和樹さんの優勝となる。
さくまさんが右腕を伸ばし、完全に裏ドラが開示されるまでは顔を伏せた状態で転がすように裏ドラをめくった。一度失敗し、改めて頭を上げて指でちょいちょいと裏ドラをひっくり返すと、そこに居たのは五索であった。
裏ドラのたった一牌に全員の視線が注がれる 思わず片山先生も覗き込む! |
この瞬間「おおおお!」という歓声と拍手が起こり、さくまさんは背もたれにドサリと倒れ込んだ。さくまさんの後ろ見をしていた千葉チームはその劇的な結末に盛り上がり「よく曲げたよ!」「よく乗せたよ!」と肩をポンポンと叩き祝福していたが、その間もさくまさんは荒い息のまま、しばらく動かなかった。
その後、運営に促されて点棒の受け渡しが完了し、そこでようやくゲームが終了となった。
健闘を称え合う四人 |
片山先生からトロフィー・賞状等様々受け取るさくまさん 10代目グランドチャンピオンが誕生 手が渋滞で握手も出来ない |
ということで、千葉リーグの代表さくまさんが第10代グランドチャンピオンになりました。
オーラスの大國さんの最速倍満テンパイ、後ろ見していた者としては七筒六筒の連続引きには肌が粟立つ思いでした。このテンパイには、このあと六索をツモって華麗に逆転勝ちする、それがもはや当たり前と思えるぐらいの確信がありました。きっと大國さんも同じ気持ちだったでしょう。
逆にさくまさんのテンパイ即リーチには「え?マジか?」ととても不安になりました。さくまさんが悩みに悩んだあの一分間は、ギャラリーにとってもとても長く不安な一分間でした。
「和了りを確信出来る倍満」対「不安気なピンフ」の戦いはピンフに軍配が上がり、一発と裏ドラを引っ提げて逆転勝利を呼び込んだ。
あそこでリーチを打ったさくまさんの決断が生んだ勝利で、あの悩みに悩んだ一分間がまさに「グランドチャンピオンを生むための一分間」だったと言えるでしょう。
本当におめでとうございます。
最後は賞状掲げてみんなでポーズ とても劇的で面白い決勝戦でした みなさん本当にお疲れ様でした |
決勝戦を、大國さんとさくまさんの間というベストなポジションで見れた事で、特に面白いオーラスとなりました。あのポジションを確保した自分を褒めてあげたい。
あと個人的には、さくまさんの裏ドラが乗った時に、逆転された側の伊藤和樹さんがニコッと笑ったのがとても印象的でした。自分ならあの瞬間にとても笑えそうにない……。
さて、これにて4年ぶりのGPCグランドチャンピオン大会のレポートはオシマイです。
来年は現チャンピオンの所属する千葉リーグが大会を主催してくれます。
その時にまたみなさんとお会いしましょう!
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