2022年4月20日水曜日

飲み終わったら終わるラジオ(23) 「ひとりの良さ」

まずはこの8分程の動画を見てやって下さい。


今回も後輩芸人の福人(ふくんちゅ)君のYouTube番組にゲスト出演してました。

今回の一文字は「な」から、「なんにもない状態で舞台に上がるか?」という話から「なんにもない状態になった場合」の話へと。
(「続きを読む」以下、およそ2,050文字)


基本的に芸人さんは「なにもない状態で舞台に上がる」事はないと思います。
マジシャンという人種は特に「絶対的に準備が命!」みたいなところがあるので、「まったくなんにもない状態」というのはまずない、はずです。

ただ、マジシャンとしての特殊な事情として、お客さんと会話をしつつ演技を進行させる場合があり、ここでまったく予想外のめちゃくちゃな返答がきて、びっくりしたり困ったりする時はあります。

もちろん、お客さんとの受け答えが変な会話にならないように上手く誘導する(ガチガチにシナリオを固める)方法もあるのですが、ある程度会話に「幅や遊び」があって「めちゃくちゃな返答」がある方が舞台は楽しくなります。
実際のところ、ほとんどのお客さんはマジシャンが困ってる場面や失敗しているところを見たがるものなので。

当たり前ですが、こういったお客さんの予想外の回答や行動で「一瞬にして頭がからっぽ状態」になるのも、経験を重ねれば相手の回答に対してある程度のパターンが出来上がるので、どんどん少なくなっていきます。

ただ、経験を重ねた上でも、予想外過ぎるとても困った回答や行動を目の当たりにする場合もあります。
そして、そうなった場合は今までの経験を軽く吹き飛ばすような強烈な「なにか」が展開されるので、大惨事になる可能性が高いです。

本当の大惨事はある程度以上に経験を経ないと起こらないというのは、マジックのちょっとした皮肉な部分だと思います。

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僕はマジシャンとしては珍しくコンビ指向が非常に強いので、今まで3,4組のコンビを組んできましたが、マジシャンのコンビ芸はまだまだ発展の余地があり、面白くなりそうな反面、二人でやる意味を見出すのが少し難しいように思います。

既存のマジックは一人で完結するものか、マジシャンとアシスタントという関係性で成立するものばかりなので、コンビという対等な関係でマジックをするというのは、実はなかなか難しいのです。
いつも相方とネタを考える際に、「なぜ二人でするのか?」という部分が最大の悩み事でした。

ただ僕には、マジックという演芸は、一人でする場合やマジシャンとアシスタントという関係性でするよりも、「コンビでする方が圧倒的に面白くなる」という確信があったので、なんとしてもそれを実現してみたかったのです。

その確信は、マジックの大会ではある程度以上に成功し、世の中に対してはまだまだ道半ばにも達していないという感じです。

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演芸をやっていくにおいて、一人が良いのか、二人以上が良いのかという話は、よく話題に登ります。
判りやすいところではピン芸人とコンビ(主に漫才師)の比較ですね。

個人的には一人よりも二人の方が「演芸を続けていく」という意味ではやりやすいと思います。
舞台上でも日常生活でも、一人より二人の方がトラブルを乗り越えやすいですし、やることの幅も拡がりますし。

また、コンビというのは不思議なもんで、一人がネガティブになってやる気を失くした場合、もう片方がきちんと必要以上にやる気になってなんとかコンビとしての体裁を維持しようとします。
どちらかの状態が悪くなれば、もう片方が「引っ張り役」として率先して先頭にたち、暗黙の了解でお互いが立場をぐるぐる入れ替えながら、コンビとしての活動を続ける。
自転車レースにおける「風よけ」のような関係です。

ただコンビで活動していけば必ず意見の衝突はありますし、最初の頃はすごく仲が良くても、コンビ結成2年目ぐらいから相手に対する強烈な嫌悪感というものも生まれます。
その嫌悪感を乗り越えたらまた仲良くなって、その後また嫌悪感が襲ってきてと、なかなか「ずっと仲良し」というのは難しいみたいです(あり得ない訳ではないですが)。

そして、僕も福人もコンビ経験者としてのピン芸人ですが、二人の共通した意見としては「一人は楽でいい」というのがあります。

一人だとやれる事にある程度の制限はあるけれど、やる事に対しての全権を自分が握れるので気兼ねがなく、とにかく楽なのです。

コンビだと「こんなんやってみたい」というこちらの意見に対して、相方が大して考えもせず「俺はそんなんあんまり好きちゃうから」や「面白くない」で一蹴される場合もあったり、相手の遅刻や舞台上での失敗も当然同じように責任を被らなくてはならないですし。

そういうネガティブな部分をたくさん経験すると、どうしても「一人は楽」と思ってしまうようになります。

ただ個人的には、どれだけ一人が楽で、コンビという関係性の嫌な部分を知っていたとしても、やっぱりまたコンビを組みたいという気持ちが残っています。
僕は一人だと、基本的にはなんにもやる気にならないので。

でも、今から本格的なコンビ結成は難しいですね。
誰かと組むとしても「ピン ✕ 2」のユニットみたいな形じゃないと無理だと思います。

いつかコンビ芸みたいなのがまた出来たら良いなと密かに思ってます。
その時は絶対に今以上の良いものを提供出来ると思います。

多分。
いや、知らんけど。


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